<<定年後の過ごし方へ戻る



はじめに

退職して10年が経ち、二人共に高齢者となった。
10年という区切りは単に数字の区切りに過ぎないし、また高齢者というのも単に年齢という数字の区切りだけれど、明らかな老いと人生の大きな変化点を感ずる。 そして、この10年と言う区切りが、残すところ多くても数回しかないと思うと、残された時間を大切にしなければならないと思えてくる。 そんな事から、これからの暮らしを、考えてみた。

10年間の自己評価
金銭的・体力的等の制約があり、自由時間を存分に楽しんだとは言えないが、「まあこんなものじゃないの」と思う。
制約があるからこそ見つけられた楽しみもあったようにも思う。
ネットのブログを 見ていると、退職を後悔している人を多々見かける。
正直自分も何度かそう思った事がある。しかし、例えもう一度退職した時点に戻れたとしても、当時の仕事を続ける気にはならなかった。 又もし自分が 70過ぎまで働いていたら、この10年間に楽しんだ事を スライドして出来るとはとても思えない。
私は、あの時に辞めて良かったと思う。
実は、職場は去ったけれど、サラリーマンではなく、今までとは全く違った分野の、趣味の延長のような仕事ができたら 良いなと漠然と思っていた。
でも、何もできていない。地域貢献も皆無で、少し後ろめたい。

ここ最近の出来事

1 義父の死

私の妻の父は2021年の暮れにこちらのサ高住に引っ越して来た。
90過ぎての異郷の暮らしは 精神的・体力的に大変だったと思うが、前向きに考えてくれて、新しい暮らしを楽しんでくれたと思う。
その新しい生活は1年と続かず、2022年の7月に病院で倒れてそのまま他界してしまった。
寝たきりになったり、痴呆になったりせず、ほとんど手間の かからない死に様だった。
とりわけ記憶力は 最後まで抜群で、自分より優れていたようにさえ思う。
死の2週間前には普段通り私と碁を打ち、私は三子置いて、彼に六連敗だった。
棺に基盤・基石の絵を書いて入れようかと思ったが、相手として連れて行かれたら困るので、 代わりに 彼が得意としていたハーモニカの絵を書いて 入れた。
彼が行きたがっていた富士山の展望の丘に連れて行ってあげられなかったのが悔やまれる。
義父が死に、私達には親がいなくなった。
親が亡くなる度に、悲しく・寂しい思いをしてきたが、今回は別の思いも加わった。
次は私達だと言う事。
義父の事で、老人ホームとりわけサ高住がどんな場所でどのくらい費用がかかるのか分かり、勉強になった。
サ高住は、孤独死を防いでくれるアパートと考えれば良いと思う。
費用は、世間一般で言われているより高くて驚いたが、安いと言う奥様方もいる。

2 長女嫁族との同居を解消

約10年間、4LDKのマンションで、長女家族と同居していたが、孫が大きくなり、これ以上は無理だと判断し出て行ってもらった。
できれば多少援助して持家をと考えたのだが、異次元緩和でマンションが高騰し、とても手が出ない。
結局暫く家賃を面倒みる事でアパートを借りてもらう事となった。
娘達が出て行ってみると、今まで一緒に 暮らせていたのが、物理的にも精神的にも、不思議だ。
勿論彼らも大変だったろう。
孫が一番可愛い時に一緒にいられて、娘に感謝している。
一緒に暮らして、自分達の介護を彼女にお願いするのは無理だと良く分かった。
妻の話によると、次女には、家を出て行く時に「介護しません」と言われているそうだ。
これから、高齢者二人きりの生活となる。
退職して奥様が夫原病になると云う話しを聞くが、家内はパートの仕事を続けているので、 夫原病のリスクは、暫くはないと希望的に思っている。
娘家族が使っていた部屋が空き、二人暮らしにはゆとりの住まいとなった。


3 妻の骨折
昨年の暮れに妻が買物中に転倒し大腿骨を 骨折した。
医師から杖が必要になるかもしれないと言われたが、幸い普通に暮らしている。
しかし階段は苦手で、また歩行は5分毎に休憩が必要だ。
転倒の原因は足がしびれて麻痺したからだそうで、その原因は脊柱間狭窄症なのだそうな。
以前から腰が痛いとは言っていた。2年前に四国遍路を終われて良かった。
骨折を機会に、パートの仕事をやめるのかと思ったら一つだけやめて、NPOの仕事は続けている。
私と家でテレビを見ているより仕事をしている方が良いと言う。
設立時からのメンバーだから、思い入れもあるのだろう。好きな仕事なら続けるに 越した事はない。
私が家事を手伝って、彼女に専業主婦をさせず、もっと働けるようにしていたら、立派な仕事ができていたのかもしれない。
申し訳ない気がする。
今回の骨折は、家内にとっても私にとっても相当ショックだった。
以前妻は、私よりも長生きすると固く信じていたのだが、このところ、「どっちが先に逝くかしら」等と弱気になっている。
4 仲間の死
テニスサークル発足時のメンバー5人中の1人が 6月に亡くなった。
享年76歳。数年前に喉頭癌の手術後、胃瘻となっていた。
テニスの他に夏はヨット、冬はスキー、自転車もやり、愛車はフェアレディZと羨ましい生活をしていた。
ヨットの処分に奥様が困っているようだった。
最後まで回復の望みを捨てずに頑張ったのだから仕方ないけれど、残された人の事を考えたら、処分しておいた方が良かっただろう。
きっと、色々処分の必要な物が残されているのだと思う。
5人中のもう一人は脊柱間狭窄症で歩行困難となり、サークルを半年離れている。
更にもう一人は高齢で休みがち、たまに来ても倒れるのではないかと心配な状況。
サークルを初めて7年、皆さん着実に老化した。
自分自身はコロナ中に狭心症を発症、今年は 胃が変調をきたし胃酸を抑える薬を処方してもらっている。
気がつけば、また体重が4kg程 減少していた。
65歳の時に風邪をこじらせ、同様に大幅に体重低下した事がある。
退職時と比べたら8㎏も痩せてしまい、明らかに体力が落ちてしまった。
口の悪い友人は、老化による縮小だというが、このペースで縮小したら、あっと言う間に消滅しそうだ。

これからの暮らしに向けて

0 住む場所
住み替えの資金はないし、今更引越しをする元気もない。 新たにサークルを探したり、友人を作ったりも大変だ。 だから今の場所に住み続ける他ないが、ここが、ある程度気に入ってもいる。 どこで暮らしても、良い点・悪い点があると思う。

a) 四季の島での暮らし
 寒い・暑いと文句を言うが、日本の四季は素晴らしいのではないかと思うようになった。
四季のある国は、世界中にいくらでもあるのだろうけど、例えば春に桜、ツツジ・新緑、夏の青、秋の紅葉、雪山と色を変える山々、 初ガツオ・秋鮭、筍・栗ご飯等の旬を楽しむ食生活。



これほど、四季の変化が艶やかで文化に関っている国は珍しく、俳句という詩が日本で普及したのは、至極当然だったのではないかと思う。
かつて漠然とではあるが、年金でリッチな暮らしができると言われた国での生活を考えた事があった。
妻が猛反対で止めたけれど、反対してもらって良かったかもしれない。
この国で、スケールは小さくとも美しく、変化に富んだ自然の中で、四季と文化を楽しんで暮らしていきたい。

b) 適度な田舎のマンション暮らし
私の町でブランド品は買えない。 たまに美術展・コンサートなどで東京・横浜に行くと、喧騒で物凄く疲れると同時に、デパート等でセンスの違いを嫌と言う程に思い知らされる。 かように、田舎町なのだけど、普通に暮らすに不便な事はない。 丹沢山地の日帰り登山ができるのが、嬉しいし、春の筍堀、秋の地元の梨も楽しみだ。 マンション住まいは、単純に一戸建てを買う資金がなかったからなのだが、今は駅に近く便利なここで良かったと思う。 不便な郊外の一戸建てを売却して移り住んできた高齢住人が多数いる。

1 住まいのリノベ

二人切の生活になったこの機会に20年経った住居をリノベーションする事にした。
ユニットバス やトイレ等、老朽化した設備の交換はその時々にしてきたが今回、床・壁・天井を全面的に新しくする事にした。
もうそんなに永く住まないのだから勿体無いと言う友人もいるが、今後、家で過ごす時間が多くなると思うので、 雰囲気を 変えて楽しむ事にした。
費用は海外旅行をやめた予算を当てる。
二年前にリノベーションを考え始めた。
当時はスケルトンとか言う、間取りを変えるような大規模な事を夢みたが、この2年間で冷静になり、 ぶつかる事が多くなったキッチンと LDとの間の作り付けの棚を取り外す以外、間取りを変えずに新しくするだけとした。
「部屋を広くしたら結局物を置く」
「前の間取りの方が良かった」
等の経験者の意見 があり、またLDを広げたり、間取りを変えたりした時のイメージが描けなかった。
部屋を大きくする代わりに物を捨て、 家具は低くし、スペーシアスにする事にした。
本・DVD、衣類、食器、TV等、色々と捨てて、断捨離になって良かった。
ソファーも捨てて、イージーチェアーを2セット入れた。
老人施設に入る事になっても、これなら持っていけるかもしれない。
「〇〇と畳は・・・」とはよく言ったもので、リノベして部屋が明るくなり、気持ちも明るくなった。
快適に家籠り生活を過ごせそうだ。
嫌でも、いつかは老人施設のお世話にならざるを得ないのだろうけど、できるだけ長く、この家で頑張って暮らそう。

2 旅

5年前にパスポートが切れてから海外旅行に 行ってない。
今年は妻が行きたがっていたシアトルに行こうかと思いパスポート申請書類を貰ってきたが引き出しに入ったままになっている。
フライトチケットを調べてみたらコロナ前の2倍以上、円安で滞在費も2倍以上だ。
円が120円/$まで戻したら考えようと思ったが、円安傾向は変わらないので、もう諦めた。
妻も「行かなくて良い」そうだ。
「古代メキシコ展」をみて、メキシコに俄然興味が沸いたが、実際に旅行を具体的に考えると面倒になって止めてしまいそうな気がする。
欧州鉄道旅行も夢のまま終わりだ。
でも英語と西語のラジオ講座は今後も続けよう。
日本で外人さんと話す事だってあり得るから。
国内旅行は2泊3日以内のゆったり日程に数年前から落ち着いた。
小さなリュックで洗濯なしに旅行ができる。
丁度手頃なリュック型鞄を購入した。
妻用の携帯椅子が入り、ストックがサイドのストラップで保持できるので便利だ。
グループツアーは家内にはもう無理かもしれない。
2月に伊勢・志摩へのツアーに参加してみたのだが、ゆったり旅程にも関わらず、ひどく疲れてしまっていた。
また公共交通機関も座れないと厳しいので、色々工夫が必要で、家内との旅行には車を使う事が多くなりそう。
旅行には車を使わない方針でずっと来て、免許証は次の更新時点で止めようかと思っていたのだが、そうはいかなくなった。
兎に角、スピードを出さない事、夜は運転しない事。
年間旅行予算は80万円。半年毎にお気に入りの温泉旅館に泊るのが恒例になっているから、この費用を差し引くと、 国内遠方の2泊3日の旅行が3回になる。
しかし今は予算を多少オーバーしても、歩かなければ辿り着けない場所には、一人で或は友人と出かけようと思う。
もうすぐ、行けなくなるのは明らか。
但し無理は禁物だ。自分の体力や反射能力を良く考えなければならない。
とにかく、歩行中のつまずき・よろけが多くなっている。

3 趣味

カヌーと西語のサークルを辞めてしまった。
孫のオモチャ作りも休止中。
それで時間を持て余すかというと、居眠りが多くなって時間を埋めている。
この先、家の中でする事なら候補が幾つもある。スケッチをしたいと思うし、視力が残っている限り、読書という時空の旅もある。
漠然と木工の口座に応募した。だが何をするにしても、継続する元気があるかどうかが心配。
元々根気がなく、何もかも中途半端になっている。
趣味を絞って徹底的に極めている知人のようでいたいと思いはするのだが。
それと、もう少し頭を使う趣味があったほうが、ボケ防止に良いかもしれない。
義父の形見の碁石・碁盤があるので、友人とやろうかな。
外での遊び・運動については、 今やっているテニス・山歩きが出来なくなった場合 の代替が思い浮かばない。
でも、杖や車椅子が必要にならない限りは、どちらも、なにがしか楽しめる方法があるように思う。
市営の温水プールでプカプカ浮かぶのもあるかもしれない。

(1) カメラ
退職と同時にミラーレスのデジタル一眼カメラ を買い撮影を楽しんできた。
孫・景色をオートでバシバシ写し、良いと思った物を家族・友人に送りつけている。コメントを貰うと嬉しい。
今年は孫の運動会が見られそうなので 望遠ズームレンズを購入しようと思って調べたら、これまで使って来たタイプのカメラは もう生産しない事がわかり衝動的にカメラも買ってしまった。
同じ機種ではないので比較するのは適切ではないのだが、スマホとの交信ができたり、インスタ映えするように 撮影の色合いを変えられたりとSNSを意識した仕様になっている。
新しいカメラで花火を写してみたら面白い写真がとれた。
少しマニュアルで写してみようかなと思う。
写真を撮って、PCで見ている分には、全くお金のかからない安い趣味だ。

(2)オーディオ
長女家族が出て行って、空いた1つの部屋をAVルームにした。
今まではオーディオセットをLDに設置してあったので、ほとんど使う事ができなかったが、専用ルームにした事で いつでも使えるようになった。
この機会に音が悪かったセンタースピーカーを買い 替えたところ、とてもご機嫌な音空間となりTVのサラウンド放送を楽しんでいる。 老人施設には持って行けないので、今の中に楽しもう。
以前のようにコンサートに東京や横浜 に出かける事も少なくなったので、丁度良かった。
勿論、コンサートの音と感動にはとても及ばないが。

あまり居心地良くて部屋に籠ってしまうと、夫婦が一緒 に過ごす時間が少なくなるので、ほどほどにしなければならない。 音の悪いかつてのセンタースピーカーを持ち上げるとカラカラ音がするので、内部で部品が外れたのかと思っていたが、 捨てる時にバスレフのダクトを覗いてみたら、トミカが入っていた。
孫兄の仕業だ。彼には、アンプのセレクターつまみももぎ取られてしまった。

もう一部屋空いている。
工作室と言っているが、未だ用途を決めていない。ちょっと楽しみ。
鉄道模型のジオラマを組もうかと思って、図書館から関連する本を借りてきたが、読んで面倒になった。

4 お金の事

車の購入、家のリノベ、海外旅行、娘達への援助などの大きな出費を除けば、二人の公的年金等の収入で普通に暮らせてきた。
ではこれからはどうなのだろう?
健康保険料・医療費のアップ、施設入居費等、色々考えられるけれど、一番の心配は国策の物価上昇。
政府の発表では、2022年の総合物価指数は前年比2.5%の上昇。これは平均の値で、65歳以上の無職世帯では、前年比2.9%のアップ。
食料や電気などの基礎的支出に限れば、4.8%の上昇。一方で年金はマクロ経済スライドの適用で1.9%のアップに抑えられている。
物価が上昇すれば年金は実質的に目減りする。
以下は毎年物価が1%、2%上昇した場合の10年~30年後の現在比の物価上昇率(私の計算)。
日銀が目標にしているのは2%で、この数字を見ると恐ろしくなる。
でも、この先何が起こるか分かりやしない。
私達の余命もわからないし、人類滅亡だってあるかもしれない。
余り先の事を心配するのは詮無い事。
できる対策は、良く必要性を考えてお金を使う事。一時、大画面の4KTVが欲しいと思ったが、今は、全く興味なし。 安物買いの銭失いには注意。食べたい物は食べる。いつ食べられなくなるか知れない。
多くの方がやっている株等の投資は、今後もするつもりなし。宝くじは買う。

5 その他
PC環境を敢えて悪くした。
今まで、机の上にディスプレーを置き、2画面でラップトップコンピューターをいじっていたが、机もディスプレーも止め、 文字通り膝の上で操作する事にした。
安易にパソコン開いて時間を潰すのを避けるためだ。
残り少ない人生をPCで費やしたくない。
タブレット買ったら元の木阿弥だが。
それと、キーボードをできるだけ使わず、紙に手書きして、Googleカメラで写してテキスト変換するようにした。
手書きができなくなるのと、単語の忘却予防

最後に
10年前、「第二の青春」などと嘯いていたのが、とても恥ずかしい。
老いに抵抗せず、と言って好奇心と遊び心は失わず、レットイットビーで気ままに、身の丈にあった生活を楽しみたいと思う。

読んで頂いて有難う

管理人追記編集後記;
団塊世代は後期高齢者と呼ばれるようになり、そろそろ、エンディングの 準備を始めるお年頃となってきています。
退職後のこれまでの生活・活動の整理や始末や、これからの想いを残し、伝えていく手段としてweb上に残すというのも一つの方法と思います。
皆様の手記、思いを残すお手伝いを致します。
この私的な、団塊世代シニアが多く集まり、アクセス数もある程度あるサイトで良ければ・・・
少なくとも管理人が元気なうちであればネット上には残ります。
原稿はワード或いは、PDF化したものをメール添付していただければ、html化し掲載します。
kamakurajapan@gmail.com


Copy right all reserved by Taibun 2023 September 20